『強行、7日間日本一周船の旅。その6』“ファイナル レグ 突入編”
(写真旅行記 2003年、日本一周すずらん乗船参照)
『霧の苫小牧港』
2003年5月29日
17:30
室蘭から苫小牧に戻る道中も、相変わらずの霧の中。
まだ明るい時間帯にもかかわらず、既に夕暮れを迎えたようだ。
夕食時間にはまだ早すぎるので、苫小牧港の様子をうかがいに行く事に。
港では「ばるな」「いしかり」「シルバークイーン」がそれぞれ出港準備を整えている。
残念ながら、海から押し寄せる霧が船体を覆い尽くし、撮影には全くむかない状況となる。
ひとまず、去年と同じ画角で「ばるな」船尾を撮る。(旅行記写真室蘭、17・18枚目)
こうしてみると、新旧の塗装の違いがよく判る。
素っ気の無い塗装にはいまだに疑問が・・・
船首側からも撮影するが、マスト上部は霧に完全に隠れてしまっている。
ますます霧が深くなり、視程は200mもないだろう。
隣の「いしかり」の姿が確認できない程だ。
「いしかり」「シルバークイーン」の撮影は、状況が更に悪化した為、断念。
街の中も霧に覆われてしまい、18:00をまわる時点で暗くなってしまった。
今回の夕食は、某HPで紹介していただいた、回転寿司に赴く。
値段を気にせずに、いろんな地元産ネタを楽しむ。
美味しい情報に感謝です。
『ここは何処?』
18:40
苫小牧東港を目指し、霧の暗闇に沈んだ苫小牧をあとにする。
東苫道路横の国道を、苫小牧東港に向けてひた走る。
霧の中の道のりが、何故か異様に長く感じられる。
しばらくすると、カーナビが右折を指示する。
確かに、交差点の右手に新日本海フェリーの案内板が見える。
「本当かぁ?」が正直な気持ち。
何故なら・・・・
そこには、原野の中をえんえんと続く一本道。
250m毎にオレンジ色の街灯があるものの、それ以外はま〜ったくなんにも無い。
対向車も無ければ、バックミラーに映る車も無い。
道を照らす車のライトがやけに心許ない。
だんだん不安が大きくなる頃、JRの踏み切りで下り列車に遭遇する。
霧の中の踏み切りは、一種独特な風景をかもし出している。
通過する列車の中の人影を見て、何故か思わず安堵してしまう。
数分後、霧の向こうからターミナルの灯が見え始める。
ようやく、ホッと一安心。
『哀愁の波止場』
秋田行きの「フェリーしらかば」が出港を間近に控え、慌ただしく積み込みを行っている。
ターミナルで乗船手続きを終え、2階の待合室へ。
早く到着しすぎた為、敦賀便の乗客もまばらである。
「しらかば」の出港時間となり、外へ出てお見送り。(旅行記写真すずらん、1〜3枚目)
強力なスラスターに物言わせて離岸していく。
霧が「しらかば」の2万トンの巨体を覆い隠し、それと同時に港内に静寂が戻る。
本当、寂しい港だわぁ!
ときおり駐車場の方から、トレーラーにでも乗せられている物悲しい牛の鳴き声が港内に響く。
う〜む、牛さんに身になれば、今生の別れになるんだものね。南無さん・・・
相変わらず閑散としている待合室に戻る。
テレビから流れるバラエティ番組の笑い声が響き渡り、いっそう寂しくなってくる。
取りあえずPCを起動し、今日のめぼしい話題をBBSにアップするが、ここはPHSの圏外。
写真の添付はあきらめ、携帯回線による、テキストだけの投稿となる。
ふと気付けば、正面の窓一杯に「すずらん」の姿が。(旅行記写真すずらん、4枚目)
台風4号の影響が無かったのか、定時に入港したようだ。
『台風対策』
私にとって4年振りの「すずらん」である。
その姿を撮影しようと、屋外へ移動。
静かな港内に、「カーン、カーン」と金属音が鳴り響く。
気になって、音のするブリッジ方向を眺めて納得。
ブリッジ下にオレンジ色のツナギを来た甲板員が1名。
梯子の上で何やら作業をしている。(旅行記写真すずらん、5〜7枚目)
ブリッジから降ろされた命綱1本を頼りに、フォワードサロンの窓に、シールドをセットしていたのである。
台風4号の高波対策であろうか。
新日本海フェリーさんの船は、10月から4月までの間、波浪対策でデッキ前方の窓が閉鎖されている事をご存知の方は多いはず。
今回、図らずもその作業シーンにめぐり合えたようだ。
てっきり、専用のデリックを使うのかと思っていただけに、あまりに原始的な作業なのには思わず苦笑してしまった。
もっとも、作業される方はとっても笑ってはいられないだろうが・・・
横で見ているうちに、下腹からゾワーっとした嫌な気持ちになってくる。
男性諸氏ならば、○玉がせり上がってくるような、と言えばご理解頂けると思う。(w
因みに、ブリッジ側には1名が命綱のバックアップをしており、高所作業の手順はしっかり守っておられました。
*これは意外に貴重なシーンだとおもいます。
『出港』
23:00
乗船開始。
船尾上部ランプから、上部車両甲板へ車を移動。
誘導に従い、車を駐車する。
エントランスで、特等和室の鍵を受け取る。(旅行記写真すずらん、9〜11枚目)
入室後、カメラを持って船内をうろつく。
が、これといった収穫は無かった。
怪しい行動だよな、俺。 orz
航路紹介図の通過時間を確認し、明日の夜明けは龍飛岬沖と判明。
ついでに、パーサーさんに「すいせん」との邂逅時間を確認する。
繁忙期であれば船内放送でお知らせしているが、通常はしないとの事。
邂逅時間は10:30頃、左舷方向を航過しますと案内して頂く。
23:55
「すずらん」出港。
外の霧は晴れたようだが、暗闇で何も見えやしない。
明日の朝も早いので、早めに布団に潜り込む。
ベッドばかりの1週間だっただけに、布団の寝心地はまた格別。
安眠へとまどろみかけた頃に、船は巡航速度へ・・・。
大出力エンジンの影響なのか、振動が布団を通して伝わってくる。
フスマを始めとして、船室の到るところからガタピシと音がする。
「エ〜イッ、全身マッサージ船かヨ!」と思わずツッコミしたくなる程。
次の舞鶴航路の新造船が、三菱さんに変わったのもこれが一因なのかもしれない。
等と、つまらない邪推を思いつく。
それでも、疲れの為か、いつの間にか爆睡モードに。
結局、寝てさえしまえば、どんな振動も関係は無いのだが。
『朝のお勤め』
04:15
目覚まし時計が鳴り響く中、布団からやっとの思いで抜け出す。
晴天ではあるが、東の水平線付近には若干の雲が残っている。
左舷側は北海道の白神岬、右舷側は青森県の三厩付近だろうか。(旅行記写真すずらん、12枚目)
残念ながら、目印となるようなランドマークが見分けられない。
朝日の写真を撮りまくり、その後は部屋に戻っての二度寝を楽しむ。(旅行記写真すずらん、13〜21枚目)
これがまた、何とも気持ちが良いのよ!(w
08:30
レストランオープンで朝食。
09:00
展望風呂開放となり、朝風呂を楽しむ。(旅行記写真すずらん、24〜28枚目)
洗い場6ヵ所とシャワーブース1ヵ所、浴槽が2槽と以外に小柄な造りである。
繁忙期には、イモの子状態は確実であろうと思われる大きさだ。
それにしても、太平洋フェリーさんの如く、24時間解放してもらえないのだろうか。
風呂上がりは売店にてジュースとアイスを購入。
後部デッキのデッキチェアで休憩。
デッキの風が、風呂上がりのほてった体に心地よい。
お気に入りの本を取り出し、暫しの読書タイム。
これも船旅の醍醐味!!
『「すいせん」との対航』
10:00
いよいよ、本日のメインイベント!
僚船「すいせん」との対航がせまってくる。
後部展望デッキにてワッチ開始。
展望デッキを右往左往しながら、両舷ワッチを繰り返す。
他人が居たら軽蔑の眼差しは確実だろうな〜。 ←良い子はマネしないでね。
10:15、右舷前方に「すいせん」を視認。 ←オイ、話が違うぞ。
10:17、カメラの電源確認。最望遠で待機。(旅行記写真すずらん、29〜47枚目)
10:18、撮影開始。以後10分間に渡る撮影作業を継続する。
10:30、撮影終了。撮影枚数18枚。
ヲイヲイ、目いっぱい楽しんじゃってるよ
後に、全ての画像を重ねて表示し、パラパラ動画にして楽しむ。 ←やっぱヒマ人だわ。
「すいせん」は、右舷側を距離500mにて対航。
ただ、船尾デッキで最大望遠にすると、船の振動で手ブレが出そう。
今回も、事前の放送並びに反航時の長声等のサービスはありませんでした。
それにしても華が無いよなぁ〜、新日本海フェリーさん。
ただでさえ陸地を見る機会の少ない航路であり、数少ない日中での僚船反航を見る事の出来る航路ですよ。
これくらいのサービスは、毎日でも実施して頂けないものだろうか?
もっとも、太平洋フェリーさんみたく、200m前後で対航するのは壮絶かも。
何せ、相対速度60kt(100km/h)で1万7千tがフッ飛んでいく姿を想像してみて下さいな。
それに、お互いの曳波でガブられでもしたら・・・・怖すぎる!
『戦い済んで腹へって〜』
以後は昼食時までデッキチェア。
柿の種を摘まみながら、のんびりと読書で時間を過ごす。
それにしても、船上の腹時計は何時になく正確である。
空腹を覚え、時計を見てみれば針は12:00を指そうとしている。
昼飯のメニューは既に決まっている。
新日本海フェリーのラーメンだ。
一部の方達に絶賛されているメニューである。(?)
麺類は昼食時間のみの販売である為、乗船される方はご注意を。
セットメニューの手もあるが、ここは単品¥680也。
ラーメンについては外れの多い私ではあるが、ご近所さんのよりは確かにうまいと断言する。
と言うより、ろくなラーメンしか食ってこなかったのかもしれないが・・・。
どのあたりかはご近所さんの手前、あえて明言を避けさせていただく。
ふと、昨日のフォワードサロン窓のシールド取り付け作業を思いだす。
作業確認の為、フォワードサロンへ移動。 ←だってヒマなんだもん。
先客がリラックスしているところをお邪魔する。(旅行記写真すずらん、56枚目)
すべての窓にシールドが設置されていることを確認。
わざわざカーテンを開けて写真に撮る。(旅行記写真すずらん、55枚目)
普通、そんな写真を撮る奴はいない。
ウワッ、先客の冷たい視線が背中に付き刺さっているのは気のせい・・・?
腹が満ちれば眠くなる、当然の摂理である。
てな訳で、お昼寝開始。
やっぱ、布団の中は気持ち良い・・・zzz。
17:00、起床。
シャワーを浴びて眼を覚ます。
ついでに下船準備も行う。
18:00、レストランに移動。
ビーフカレーとサラダを選ぶ。
なんか、食ってばかりいるなぁ。
既に越前海岸沖を航行しているようだ。
海岸沿いの街並みに灯がともり、車のヘッドライトやテールライトが・・・
で、「旅はぁ、まだ終わらない〜」と思わず口ずさむ。 ←プロ×(w
台風4号の影響であろうか、ここに来て白波が立ち始める。
船自体には動揺等の影響は無いようである。
定刻より15分早い、20:00到着のアナウンスを告げられる。
さて、下船準備を済まさねば。
20:00、ランプドアが開放。
いよいよ下船である。
残るは、自宅まで数時間のドライブ。
ここは安全運転に徹し、ゆっくりと参ろう。
6泊7日、うち、船中5泊という、ハードな日本一周フェリーの旅を終えた。
初めての土地、初めての船、そして船中で会った人達。
ハンドルを握りながら、旅の色々な思い出が、整理されないまま頭の中を駆け巡る。
さて、日常を離れる旅もこれで終了。
明日は自宅で旅の垢落とし。
そうそう、車の塩も洗い落とさなきゃ・・・。
九州西岸、沖縄航路、紀伊半島が抜けており、完璧とはいきませんが、オバカな日本一周航海日誌、如何でしたでしょうか?
結局、全6編になっちゃいました。
根がお調子者故、文章のあちこちがとっ散らかっちゃいましたが・・・
まあ、お気楽な読み物としてお楽しみ下さいませ。
さてさて、次編はどの航路を目指そうか。
関係各社様、お気を確かに!!
最後に、この旅に有益な情報を提供していただいた皆さんに感謝です。
お調子者の旅日記を掲載頂いた管理人様、お読みいただいた皆さんに感謝!
ついでに、この旅日記に触発されて、同じルートを目指されたい方に御忠告。
身体にも懐にもけっして良くないと思われます。(w
その際は、必ず再考されん事を。(出来れば、余裕を持った日程で!)
その後:
旅を終え、早4ヶ月が過ぎようとしています。
その僅かな期間で、色々な事が起こってしまいました。
東日本フェリー・九越フェリーの会社更正法適用、九州地方の大雨災害、熊本フェリーの存続問題、宮城県地震、冷夏に台風10号、「すいせん」盗難事件、先日の十勝沖大地震・・・
旅の足跡をなぞるような各地の災難に、我ながら驚きを覚える今日この頃。
やっぱり俺って疫病神!?(あぁ、俺って奴は・・・)
来年こそは良い年でありますように!(もう、かよっ!!)